姉さん事件です!
(『スペーストラベラーズ』)
姉さん、これは愛すべき映画です。 3人組の強盗が銀行を襲撃、人質をとったまではよかったが…という冒頭の滑り出しは好調。 観ているものを退屈させません。強盗を結婚祝いの“ビックリパーティー”の余興と思い込み、 「すっごーい!」とはしゃぐ相田みどり(深津絵里)のズレ具合とか、二丁拳銃を構えたまま パーティー会場の扉を開けてクラッカーの爆裂音を浴び、一瞬固まってしまう西山(金城武) の表情とか、金庫の中に閉じこもってしまった支店長(大杉漣)とガードマン(ガッツ石松) のやりとり等々、随所随所で“笑わせどころ”を織り混ぜ、ストーリーはテンポ良く進んで行きます。 一方銀行の外では、パトカーどころかヘリまで出動して大変な騒ぎになっているんです。 (警視庁特殊捜査班“SIT”隊長役の小木茂光さんがイイ味だしてます)そんな中、 一人ダクト内部を這い回り逃げまどうのは、みどりの婚約者・野々村(浜田雅功)なワケで…。 やがて人質と強盗たちとの間に妙な一体感が生まれ、事態は妙な方向へと動いて行くんです。 本広監督は以前、とにかく自分がやりたいのは純粋な娯楽作品なんだ、という意味合いの事を 話してました。小難しい理屈抜きに楽しめる映画を、と。確かにこれはエンタテインメントです。 『踊る大捜査線』の次に送り出す作品としては申し分ありませんよね。 問題は後半なんです。爆弾が作動したあたりから少々展開が苦しくなっているように 感じられるんです。(いや、正確には坂巻(渡辺謙)を逃した時点で、既に息切れが…) 爆弾…もっと巧く使えなかったんでしょうか。そして、あのクライマックス。 脚本は岡田惠和だし、流石に『僕らの七日間戦争』(1988)みたいな展開にはならないとは 思っていたけれど、ああするかなあ。いや、「パラダイスに行ってくる」っていうのは 良いと思うんです。しかしラストシーン、みどりの涙で全てを締めくくってしまって良いんでしょうか。 これは単に好みの問題かもしれないんですけど。とりあえず最後は泣き落とし? それはそれでかまわないけど、つむじ曲がりの映画ファンとしては(笑)何か物足りないというか… もう少し辛口でもいいと思ってしまうワケで…。 とは云うものの、不思議と損をした気分にはならないのは何故なんでしょう。 なんだか観終わった後、本来不満を感じる部分まで全部許せてしまうような気分になるんです。 登場人物に一人も根っからの悪人がいない(おそらく監督の人柄を反映しているんじゃないかと) せいなんでしょうか。ちょっとしたファンタジーでも観せてもらった感じというか…。 姉さん、多分これはそんな、愛すべき映画ですよ! ※『ホテル』の高嶋政伸調にしたかったのですが、あまりうまくいきませんでした(笑) |